11. その他のめまいの病気

1)前庭神経炎

大項目からもれた病気をいくつか紹介します。比較的ポピュラーな病気に、前庭神経炎があります。典型例は、ある日、突然、激しい回転性めまいがおこり、嘔吐し、回転性めまいが数日間つづきます。1週ほどでめまいは軽快しますが、職場復帰には2週間ほどかかり、1ヶ月ほごで、通常の生活にもどれるようになります。炎症の炎がついていますが、炎症の証拠はありません。突然、一側の前庭機能(おもに半規管の機能)が低下あるいは消失し、原因の不明な状態を、前庭神経炎と呼ぶ約束なのです。似た病気として、高度の難聴が突然発症する突発性難聴でも、一部の例で程度のさまざまな回転性めまいをともない、中には前庭神経炎のように、数日間つづく例もあります。

内耳を栄養する動脈(内耳動脈)さらに細い動脈に、血栓がつまり栄養する領域におうじて、主に蝸牛管、前庭器、あるいは両組織の機能が障害されると考えられます。前庭神経炎も突発性難聴も、障害の程度はさまざまで、機能が消失するものから、軽症ですぐに改善するものまであります。前庭神経炎で、発症直後に機能が高度に低下しても、数ヶ月後には、改善することが少なくありません。機能の判定には、外耳道に水を注ぎ、半規管の反応の強さを評価します(温度刺激検査、カロリックテスト)。下図は前庭神経炎45名の年齢分布で、男女性間に大きな差はありません。30代から70代までほぼ等しく発症し、メニエール病のような多忙な勤労世代の突出はありません。

前庭神経炎90名の年齢分布

2)前庭器の機能低下

さまざまな原因で、一側や両側の前庭機能、あるいは蝸牛の機能が低下する場合があります。一側が障害されるのは、前庭神経炎、突発性難聴後遺症、ウィルス感染(流行性耳下腺炎、顔面神経麻痺をともなうラムゼー・ハント症候群など)、内耳奇形をともなう中耳・外耳奇形、内耳炎(真珠腫性中耳炎の内耳波及、中耳手術、梅毒)、頭部外傷にともなう側頭骨骨折などです。両側性の前庭機能低下は、糖尿病や高血圧にともなう動脈硬化、細菌やウィルスによる髄膜炎、内耳毒性のある抗生物質の投薬(ストレプトマイシン、カナマイシン、ゲンタマイシンなどアミノグリコシド抗生物質)、梅毒などです。

前庭機能低下39名の年齢分布

前庭機能低下39名の原因疾患

上図は当施設の前庭機能低下39名の年齢分布(上段)と原因疾患(下段)です。一側性、は60代、両側性は70代にピークがあり、次が50代と、お年寄りや中年世代が多くなっています。原因疾患は、一側性では突発性難聴後遺症が、両側性では不明が最多です。中高齢世代が頭抜けて多いことから、原因不明の多くも加齢や動脈硬化に由来すると考えられます。一側性の場合、機能消失や低下が若い世代に発症しても、すぐに適応しますが、中年以降になると適応能が低下し、症状が発現しやすくなります。受診時の訴えは、めまいが20名、ゆれる・ふらつく16名、フラフラ2名、難聴・耳鳴1名でした。

温度刺激検査を行った26例中、反応消失が15名、高度低下が11名でした。お年寄りで前庭器の機能消失や高度低下があると、バランスが損なわれ、転倒のリスクが高まります。毎日、安全な野外であさと夕方、なるべく長く歩くようアドバイスしています。

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