04. 多忙がかかわるが、めまいを欠く難聴・耳鳴り

低音障害型感音難聴365名の年齢分布

前項でも触れましたが、メニエール病と同じように、中低音の難聴で発症し、終始めまいをともなわない病気があり、低音障害型感音難聴とか、蝸牛型メニエール病と呼ばれています。メニエール病で回転性めまい発作が消失すると、正にこの病気と同じ状態となります。受診数はメニエール病よりもずっと少なく、より軽症の傾向があります。しかし、中には高度に進行するまで、一度も回転性めまいを起こさない例もあります。年齢分布はメニエール病に似ていますが(上図)、メニエール病は女性が男性の1.41倍に対し、低音障害型感音難聴は1.92倍と、女性の割合が高くなっています。

過去に、同一期間に受診した、メニエール病と低音障害型感音難聴の患者数を、罹病期間別に調べたことがあります。罹病期間が長くなるにしたがい、低音障害の割合は減少し、メニエール病の割合が増加します(下図)。アンケート調査から、メニエール病患群は我慢や熱中行動が強いのですが、低音障害群はその程度が弱く、我慢行動よりも時間に追われる行動の強い傾向がみられます(メニエール病の項参照)。これらより、低音障害はメニエール病よりも、生来の素因よりも環境要因が強く、そのため治りやすいと考えられます。

罹病期間別の低音障害型難聴とメニエール病の患者割合(2006.5-2008.4.)

次に紹介する例は、2008年、職場多忙で中低音障害を発症し、他院で投薬治療を受けていた方です。発症後の3年間、回転性めまいを欠いていた時期は、正式には左低音障害型感音難聴と診断されます。その後回転性めまいを発症してメニエール病となり、頻発するため紹介受診しました。有酸素運動を実践して8ヶ月後、難聴はほぼ正常に回復しました。しかし、職場多忙と親の介護が重なり、2014年8月、両側難聴が高度となり、回転性めまいも再発しました。生来、責任感が強く完璧主義で、手抜きが苦手です。その後、中低音は回復し、めまいも消失しましたが、右高音が低下し、耳鳴を常に訴えています。本例からも、メニエール病と低音障害型感音難聴の区別は不鮮明で、治療上はあまり意味ないといえます。

症例:48歳男性、高校教師

本疾患でもっともやっかいな問題は、他にあります。「2.日毎に変わる耳鳴り、聞き辛さ、耳閉塞感」の項で説明したように、浮遊耳石が蝸牛管に影響し、さまざまな耳症状を発現させ、その中に、高頻度に中低音障害が見られることです。鑑別は必ずしも容易でありません。良性発作性頭位めまい症の再発予防指導で、耳症状も短期間に軽快、消失するので、原因は浮遊耳石と考えられますが、いまだ科学的に立証されていません。一般に、浮遊耳石由来の聞き辛さは、聴力検査から予想されるより軽く、聴力図で明らかな難聴があっても、聞き辛さの自覚に乏しい例にしばしば遭遇します。

問題は、聴力検査で少しでも中低音障害があると、多くのクリニックや病院で、すぐに浸透圧利尿薬ばかりでなく、ステロイド薬が投薬されることです。ステロイド薬とりわけベタメタゾン(リンデロン)は強い副作用があります。現実に、他施設で大量、あるいは頻回投薬され、不眠、緑内障、高血圧、糖尿病、ムーンフェイス、骨粗鬆症の悪化、頑固な湿疹、長期にわたる体調不良をきたし、受診した方が少なくありません。ステロイド投薬が適応となる内耳疾患は、突発性難聴(突然、高度の感音難聴がおこる)だけです。信頼できる医師を探すことがもっとも大切です。

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