めまい外来

耳の病気か脳の病気かを正しく診断

めまいは、大半が内耳の病気から起こるため、一般的には耳鼻咽喉科でみる症状とされています。しかしなかには脳梗塞の初期症状として起こる場合があり、めまいをみる医者は、少なくともそのような危険な病気を見逃さずに診断しなければなりません。
「めまいは耳鼻科の中でも専門性の高い分野なので、すべての耳鼻科医に十分な知識があるとは必ずしもいえません。めまい外来は、めまいの専門知識を持った医師が、正しい識別診断ならびに適切な治療を行う場として設けられています」

まず脳梗塞を疑うことから

めまい外来の診察では問診が最も重要視されています。というのも、問診だけで判断のつく患者が少なくないからです。とりわけ、既往症や生活習慣か ら「脳梗塞のリスクあり」と判断できる場合にはその可能性を疑い、何はともあれ脳の画像検査(MRI)を行うことが通過すべき診断手順の第一関門となりま す。

たとえば心筋梗塞や脳梗塞の既往症、心臓の合併症、肥満、高血圧、糖尿病の有無のほか、中高年以上で、多忙で不規則な生活をしている、などこれにあたり ます。逆に、もしこれらのリスクのあてはまる人がめまいを感じたら、すぐにMRI検査を受けることが必要です。
「脳梗塞は疑いさえすれば診断は難しくないものです。怖いのは疑わずに見逃してしまい、早期治療の機会を逸して後遺症が残ることです。実際には、めまいか ら脳梗塞が見つかるケースは決して多くはないのですが、めまい外来ではそのわずかな可能性も視野に入れて診断を行っているといえます」

めまいの多くは生活習慣病?

めまいの診断では、ほかに聴力検査、眼振(目の動きを調べる)、温度刺激検査(耳の水を入れて三半規管の働きを調べる)などが行われます。

めまいの中で最も多いのが「良性発作正頭位めまい症」。耳石という炭酸カルシウムの小さな結晶が三半規管にこぼれ落ちることによって生じるめまいです。 朝起きがけに目が回る、歩くときに足下がゆらゆらして定まらない、などの症状が、起こったり治ったりを繰り返し、自然に治ることも珍しくありません。

患者が40〜70代に多いことから、老化に伴う症状だともいえますが、「私はむしろ生活習慣病の要素が強いと捉えています。というのも、枕を使わないで 昼寝したり、下を向いて草むしりをしたりと、頭の低い姿勢をじっと長く続ける習慣のある人が圧倒的に多いのです。八歳でこの病気になった女の子がいました が、話を聞くといつも寝転んでテレビを見ていたそうです。浮遊耳石置換法という運動療法が効果的ですが生活指導だけでかなりよくなるケースも多いです」

このほか生活習慣がかかわるものとして昼夜逆転の生活や睡眠不足を続けた結果、脳の機能が一時的に朦朧としてめまいを起こす若者が増えています。

メニエール病患者の特性に注目

さて、最も厄介なのがメニエール病です。症状としてはめまいに耳鳴り、難聴、耳の閉塞感などを伴うことが多く、内リンパ水腫(内耳の内リンパ腔荷 水がたまる)があることは確かなのですが、原因はよくわかっておらず、したがって決定的な治療法がないのが現状です。

最初は放っておいても自然に治りますが、しばしば再発し、再発を繰り返しながら進行するのがメニエール病の特徴です。今のところ唯一の治療薬とされてい る浸透圧利尿剤も効果は一時的で、長引くと難聴が進み両方の耳が聞こえにくくなってきます。

高橋先生は、この病気の心身症的側面に注目し、患者の行動習慣を九年近く研究し続けてきました。その結果、メニエール病の患者は一般の人に比べて、自己 抑制行動(がまんする)と熱中行動(徹底的にやらないと気がすまない)の二点が極端に強い傾向が出たのです。

生活指導療法で再発を防ぐ

この調査結果を生かして、高橋先生はメニエール病に対する生活指導療法を提唱しており、めまい専門医の間で注目を集めています。
「六〇代で発症する女性が多いのも、看護や看病など家族に起因するストレスが多く、さらに、がんばっているのに認めてもらえない“報酬不足”から生じる不 満がストレスを増幅させるという背景があると思われます。早めにそれに気がついて、いい意味での手抜きや発散を心がけるなど生活や環境を変えることで、全 快しうる病気なのです」

メニエール病は、初期の再発予防が治療の鍵となりますが、今後は生活指導療法も浸透圧利尿剤と並ぶ治療の柱になっていく可能性があります。

「世界中の耳鼻科医がメニエール病の原因を五〇年間研究して解決できないのですから、本質的な原因は内耳以外にあるのかもしれません。たとえば脳の情動 や感情が関係していることも考えられます。すくなことも私の印象では、メニエール病の患者さんで毎日を楽しく明るく満足に暮らしている人はあまり見受けら れないのです。やはりいろんな意味での“不満”が発症に関わっているのではないでしょうか」
日本めまい平衡医学会では、めまいの専門医リストをホームページ上で公開しています。

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